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2020.01.23

ソックス開発秘話(耐久性の追求)

“ERGOSTAR”を展開する私たちは、”株式会社キタイ”という会社名の靴下工場です。長年、大手スポーツブランド向けソックスの企画開発を行い、その中で技術力を磨き上げてきました。そして、その技術力を結集して私たちが独自に企画開発したソックスが”ERGOSTAR”です。
しかし、持ち前の技術力があっても、新しいソックスを一から開発するのは簡単ではありません。今回は、そんな私たちがERGOSTARソックスを開発した時の、ちょっとした苦労話をご紹介いたします。

試作品トライアル!しかし、、、

2018年の夏、ERGOSTARソックスの試作品を使ったトライアルを行なっていました。試作品を実際のランニングやレースで着用し、その機能性や耐久性をテストすることが目的です。
下の写真は、現在の「5本指ソックス」の原型である”プロトモデル”です。(ロゴマークは無く、テーピングの形状も今とは少し違っています。)
試作したソックスをランニングで繰り返し着用し、走行距離が約50kmを超えたあたりの状態です。

写真を見ると、親指の先に穴が開いているのがわかると思います。ちょうど親指の爪の先が当たる部分です。ここに穴が開いた経験のある方も多いのではないでしょうか?また、つま先周辺のよく動いて擦れやすい部分は、繊維が毛羽立って脱落してきています。
「強度不足」は明らかでした。

何を優先するべきか?

この時点では、ERGOSTARの基本素材として「綿混紡糸」が妥当だろうと考えていました。
それは大手ブランド向けの商品でも広く採用されている汎用性の高い素材で、糸の色数が豊富でカラーバリエーションが展開しやすく、小ロットで仕入れることができ、しかも流通量が多いためコストも低い、という作り手に都合の良い条件が3拍子が揃っていました。勿論、そこに至るまでにいくつかの候補となる素材があり、比較評価の結果、総合的に判断した結果です。しかし、綿混紡糸をベースに数パターンの異なる編み方で試作、繰り返しトライアルを実施しましたが、どうしても強度面での不安を拭い去ることはできませんでした。

ものづくりにおいて私たちが優先すべきは何か…?やるべきことは何か…?もう一度原点に立ち返って考え直す必要がありました。

素材の大幅変更、設計の見直しへ

一般的にソックスは「消耗品」と思われているかもしれません。しかしランニングにおいては、ソックスはランナーの足元を支え、共にフィニッシュまで走らなければなりません。強度が不十分なソックスでは、ランナーは不安を抱えて走ることになるでしょう。逆に、タフなソックスであれば全力が出せるはずです。ERGOSTARが目指すのは、ランナーが”もっと自分らしく”走れるソックス。思い切って素材の大幅変更に踏み切ることにしました。その時点で、ソックスの設計は既に大部分が決定していましたが、それを根本から覆す仕様変更です。

改めて選んだのが、現在の素材である「ナイロン糸」です。
この変更をするにあたり、まず頭に浮かんだ問題が「コスト」でした。綿混紡糸に比べて高価な(コスト1.5倍)素材であるため、原料費が上がり、コスト構造が大幅に変わってしまいます。しかし、予定してた販売価格を上げることはしたくなかったため、製造工程での更なるコスト圧縮が必要になりました。

そしてナイロン糸での試作においては、度重なる修正の末に出来上がり始めていたソックスの設計(サイズや幅、指の設計など)も、一からやり直す必要がありました。なぜならば、綿混紡糸とナイロン糸とでは、糸の太さやストレッチ糸などの性質が大きく異なるからです。糸を変更したのに同じ編み方をしていると、サイズ感やフィット性が全く異なるものになってしまいます。
その調整手順ですが、まずは綿混紡糸と同じ編み方で、糸だけをナイロン糸に変えてソックスを編んでみます。そうすると綿混紡糸とは似て非なる別物のソックスが編み上がります。なぜそんなことをするのかというと、糸の変更によって「どの部分がどれだけ変わったか」が明らかにするためです。その情報を基に、適正なサイズとフィット感になるように各部位の編み方を調整していくのです。とても根気のいる仕事になりますが、こういった繰り返しの修正にも柔軟に対応し、試作品の精度を高めていけるのが私たち工場の強みです。

ついに完成、強い5本指ソックス!

そしてようやく完成したのが、現在の5本指ソックスです。素材の変更により、繰り返し着用しても毛羽立ちや繊維の脱落は無く、親指に穴が開くことも無くなりました。以前のような強度面の不安は全くありません。着用テストの結果も良好で、300km以上を走行してもまだまだ着用できる耐久性を誇っています。

ソックスの耐久性をデータで実証するため、専門の試験機関でテストしたこともあります。
結果は以前のブログ(↓)に掲載しておりますので、合わせてご覧ください。

“長く使う”というエコ

“完成”の無い、ものづくり

私たちは、ソックスの開発に本当の意味での”完成”は無いと考えています。
出来上がったソックスが”最高”だと感じたとしても、それは”現時点での最高”かもしれません。また、時代とともソックスに関係する様々な環境も変化していきます。例えば人の体格、足の特徴、スポーツの技術、シューズの素材や形、そして人々の気持ち…(心・技・体) それらが変化していく中で、ソックスも変わっていくのが自然の流れではないでしょうか。その意味でソックスの開発に”完成”は無く、常に改良の余地があると考えています。私たちの飽くなき挑戦は、まだまだ続きます!

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